「初心者必見!DIYでカーラッピングを始める前に絶対に押さえておきたい四つのルール(後編)」では最後の鉄則として、施行後のフィルムに”ポストヒーティング”という作業を行うことをあげました。
DIYカーラッピングではこのプロセスをスキップしたり、そもそもポストヒーティング自体を知らない為に、多くの失敗が発生しています。
ポストヒーティングを適切に行う事で失敗の確立をグッと減らすことができます。
ただしポストヒーティングはDIY初心者には向いていません。
道具を揃えるなどのコストもかかる上、温度管理の技術が必要になるためです。
中上級者向けのテクニックといえます。
・ポストヒーティングとは?
ではポストヒーティングは一体何のために行うのでしょうか。
PVC製のカーラッピングフィルムは熱をかけて伸ばしてしまうと熱可塑性により元に戻ろうとする(縮もうとする)力が働いてしまう事はご説明した通りです。
熱をかけて伸ばして施行した直後のミラーやバンパー、ドアノブなどの湾曲部分では、フィルムの元に戻ろうとする力と、貼付けておく粘着材の絶え間ない戦いが繰り広げられているのです。
そして、元に戻ろうとする力が勝ったとき、フィルムは無惨にも縁から剥がれ落ちてきます。。
実はポストヒーティングによってこの元に戻ろうとする力を”取り除く”事ができます。
一定の温度で一定の時間熱をかける事によって元に戻ろうとする性質が失われるためです。
簡単に説明しますと、これにはフィルムの素材そのものと関連しています。
「素朴なギモン。なんでカーラッピングフィルムって伸びるの?」でHAPPYKREUZフィルムには伸びたり縮んだりする性質(熱可塑性)があることを解説いたしました。
この熱可塑性のフィルムが持つ特性を詳しく知ることで、ポストヒーティングの効果を理解することができます。
HAPPYKREUZのフィルムは基本的にPVC(ポリ塩化ビニル)という樹脂が原料です。
PVCとは
ポリ塩化ビニル(ポリえんかビニル、polyvinyl chloride、PVC)または塩化ビニル樹脂とは一般的な合成樹脂(プラスチック)の1つで、塩化ビニル(クロロエチレン)を重合したものである。俗に塩化ビニール、塩ビ、ビニールなどと呼ばれる。
Wikipediaより
実はこのPVC(塩ビ)自体はもともと硬くて脆い性質を持っています。
これを加工したり強度を保つために、塩ビには柔らかくする成分を混ぜており、これを「可塑剤(かそざい)」と言います。
つまりフィルムが伸びたり縮んだりする性質は、原料のPVCではなくこの可塑剤によってもたらされています。
そしてこの可塑剤は通常はPVCの内部に含まれた状態ですが、一定の温度以上で加熱されると蒸発して飛んで無くなってしまいます。
PVCの内部の可塑剤が飛ぶと、フィルムの熱可塑性は失われます。熱可塑性が失われるとフィルムはその失われた形のまま固まります。つまり、もうそれ以上は伸びたり縮んだりしない、という事になります。
この状況を人為的に作り出す作業が「ポストヒーティング」なのです。
・ポストヒーティングに必要な道具
まず使用する道具はまずヒートガンです。
フィルムを伸ばす際にはドライヤーでも代用できるのですが、ポストヒーティングに関してはドライヤーでは熱がたりません。また時間もかかるのでドライヤー自体が壊れる危険性があります。ぜひヒートガンを揃えてもらいたいものです。
次に必要なのが温度計です。ポストヒーティング中は高温(90-100℃)になるため、温度計は離れた位置から温度を計測できるレーザー式(IR)温度計が好ましいです。これも「大体の感覚」でやると殆ど失敗します。
ぜひ揃えておいてください。
・ポストヒーティングのやり方
ポストヒーティングを行いたい部分にヒートガンで熱を加えます。
HAPPYKREUZのフィルムでは90℃前後になるように加熱します。
ポストヒートの温度はフィルムメーカーにより異なりますので、メーカーに確認してから行いましょう。
多少は超えても大丈夫ですが、可能な限り目標温度になるように調整しましょう。
熱が少ないと充分にポストヒーティングされませんし、熱を加えすぎるとフィルムが損傷する可能性があります。
この為にも適切なポストヒーティング温度を事前にメーカーに確認しておく事を怠らないでください。
※ポストヒーティング温度すらわからないブランドのフィルムを使うのは・・・やめておきましょう。。。
まとめ
ポストヒーティングのポイントのまとめです。
仕上げた後にもう一手間。これがカーラッピングの成否を分けるといっても過言ではありません。
・ヒートガンを使用する:ドライヤーでは熱が弱すぎ、プロパントーチは強すぎます。
・めんどくさくても、根気よく:2週間後、きっと自分を褒めてあげる事でしょう。
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